遠浅

平野明

2026-05-01から1ヶ月間の記事一覧

風船の膨らませ方

年上の女のひとが「わたしもうおばさんだから」というとき、その言葉の自虐的な響きがわたしには悲しく聞こえ、「もう」でもないし「おばさん」でもない、美しい彼女に、慌てて、でも慌てていない風を装って「そんなことないですよ」と平坦な声で返事してい…

緑色の光線

御岳山にハイキングにいった。話したいことがたくさんあったから、口をモソモソ動かしながら登っていった。 周りの景色が緑色になってきて、空気は冷たく、足元は柔らかく、ミソサザイのさえずりが響いてきて、遠くから湧き水の匂いがしてくると、人間界のこ…

本を売ってる場合ではない

文学フリマ東京42では過去最大の3,509のサークルが出店していた。小学校の体育館が10個並んでもまだ足りなそうな広大な会場に、小さな人間と小さなテーブルがぎっちり詰まったのが、まるごともうひとフロアあった。歩いても歩いてもひとの顔。次から次へと流…