遠浅

平野明

埋葬、文庫化!(埋葬/横田創)

(うめはらももさんのカバーめっかわだぁ〜)

横田創の小説〈埋葬〉が中央公論新社から文庫になって発売されました!ね!

うれしいし、わたし以上にうれしい人がいることがうれしい。アイザック・ディネーセンは〈アフリカの日々〉のなかで「作品にはそれぞれの運命がある」と書いていましたが、埋葬の運命はどんなものなのか、文庫化によって見させられた気がします。百人一首には「もろともにあはれと思へ山桜 花よりほかに知る人もなし」という歌がありますが、埋葬はこの山桜のようなもので、読者の個人的な絶望の地に立つ、ただひとつの桜の木(=The book)なのだと思います。

埋葬だけではなく〈トンちゃんをお願い〉と〈わたしの娘〉も収録されてありますね。トンちゃんをお願いは、貧乏な女子大生トンちゃんとゆうなの話で、好きのなかでも特に好き!な作品です。自分の弱みを指摘されないまま許されたときの言葉にならない憤りと安心の混じった涙が、読むと勝手にほっぺを流れていきます。なめらかで途切れない文体も魅力的で、はじめて読んだとき「文章を書けるひとってのはいいなぁ〜」とうっとりしたことを思い出しました。トンちゃん、めっちゃいいんですよ。切ない。これを機にみんなのトンちゃん感想を聞きたいです。
〈わたしの娘〉は双子のライオン堂出版のしししし2に掲載された作品ですね。双子のライオン堂出身の作品が文庫になるのは初めてのことらしく、これまた喜ばしいです。

ひとときは1万円以上(!)もするプレミア本になっていた埋葬。人に勧めやすい値段と形になってファンとしてはとてもありがたいです。

これからもたくさんの人に読まれてほしいです。