遠浅

平野明

世界はどこにある?(ベイビーわるきゅーれ/阪元裕吾)

ベイビーわるきゅーれエブリデイ!(ドラマ)が面白くて、映画のベイビーわるきゅーれシリーズを全部見た。2021年のベイビーわるきゅーれ、2023年のベイビーわるきゅーれ2ベイビー、2024年のベイビーわるきゅーれナイスデイズ。どれもおもしろく、テレ東のネットショップでぬいぐるみ(カルビイカ)を買ってしまうほど夢中になった。


(↑「ベイビーわるきゅーれ2ベイビー」)

ベイビーわるきゅーれは、プロの殺し屋としてタッグを組んでいるチサトとマヒロの物語である。令和っ子を写したような基本ローテンションだけど楽しいこと好きで口の悪いチサトと、人見知りで社会不適合すぎるマヒロのシュールな掛け合いは微笑ましいし、阪元監督の紋切り型辞典が炸裂していて笑ってしまう。人物は愛らしいのにピストルを握ればプロの仕事人で、華麗なからださばきで相手をやっつけるアクションシーンには毎回惚れ惚れする。まひろの身ひとつでの殺し合いは映画の華で、強い生命の持つ美しさに観ている側の血が沸き立つ。

ベイビーわるきゅーれの最終回ともいってよさそうな、ドラマのエブリデイ!の12話では色々考えさせられた。ふたりの関係に名前をつけず、ただお互いが大事で、仕事と生活の重なりに成り立つ信頼関係だけがわたしたちの真実である。思い出したのはドラマのアンナチュラルで、仕事仲間の女ふたりはどう考えたって友達なのにお互いを「友達じゃない」といいあうのがとびきりオシャレだと思ったけど、ベビエブのように正面から「大好き」で撃ち合うラストは監督の素直さが現れているようで、今っぽい終わらせ方だなーと思いつつも、ベタに感動した。

チサトが会話のリズムや映画の色合いを作っていくけれど、物語の太いところはマヒロにあったように思う。口下手で人が苦手で、社会には馴染めない。殺ししかできない。ではマヒロはなにを自分の「世界」にしていくのか。社会がわたしの世界でないのなら世界はどこにあるのか。そのために仕事をして、そのために帰ってくることのできるわたしの世界はどこにあるのか。

ベイビーわるきゅーれ1のマヒロの言葉が透明に響いてくる。
「わたし、社会とかには馴染めないし、馴染みたくないし、正直無理だと思ってるし、向き合わなきゃいけないとも思ってないのね、全然。だってこれ、向き不向きがあってわたしには向いてないから向き合う必要がないと思ってる。だけど、これからチサトとは向き合っていけたらなって思ってるんです。割と大事な人だから、ハイ。」

何度もみたい映画になった。素敵なイメージであった。全国のどこそこから「ベビわるみたいな感じで〜」という声が、稽古場から、美容室から、服屋から聞こえてきそうな気がする。ありがとう、ベビわる。永遠なれ。(カルビイカのぬいぐるみを買った全ての女の子たちと心の中で手を繋いで。)

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