遠浅

平野明

ギャラリートークをもっと

神奈川県立近代美術館 鎌倉別館で開催されている展示「川口起美雄 Thousands are sailing」に行ってきた。ギャラリートーク(=作家が作品を解説するイベント)にも併せて参加したんだけど、これが想像以上によかったので記しておきたい。

これまで美術館に行くことはあっても、ギャラリートークに足を運ぶことはなかった。ていうかむしろ避けてた。作品は作品だけで完結しているはずというのがひとつ、それから、話すことや人柄を見てがっかりしたくない(その作品が好きならなおさら)というのが大きくあった。がっかりするのは演劇のトークイベントで何度も経験済みだった。

でもでも、川口起美雄のギャラリートークはめっちゃ面白かった。絵画だからかもしれない。いや川口起美雄の絵画だからかもしれない。絵自体が静かだから、ことばが登場することに意味があるのかもしれない。

川口起美雄の話すことは、これまでのざっくりした経歴と、主な作品の解説、着想から完成までの思考の過程などで、絵の周りでなにが起こっているのかを話してくれる感じだった。観客からの質問に答え、その答えをふくらませてゆるやかに自分に引きつけながら、次の質問に答えるという感じで、無言を恐れぬ静かな語り口調にも惹きつけられた。"re-presentation"ということばも使っていて、これ聞いているひと分かるんだろうかというシーンもあったけれど、普段考えていることを"パフォーマンス用に"分かりやすく噛み砕かずにそのまま話している感じも、手を抜かれてない感じがしてうれしかった。

今後たぶん、行きたい展示にギャラリートークがあったらそれに合わせて行くと思う。いち観客の願いとしては、展示するひとはぜひギャラリートークを開いてほしい(行きたいひとがここに一名います)。腑に落ちるためじゃなくて、そこから思いもしなかった思考をはじめるために話を聞きたい。

(川口起美雄。話もおもしろかったけど、展示もめ〜〜〜っちゃよかった。想像を超えてきた。展示は2026年2月1日まで。)