遠浅

平野明

Fish Don't Exist

現在の研究現場では生物分類の基盤として「分岐分類学」が主流になっているらしく、この分類の仕方では生物に「魚類」ってジャンルはありませんよってことを、ルル・ミラー「魚が存在しない理由(Why Fish Don't Exist)」で知った。

では中学生物で習った脊椎動物の分類「魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類」はなんだったのかというと、これは「分岐分類学」とは異なる立場の「進化分類学」を簡略化したものだったらしい。「水の中に住む」「エラ呼吸する」など、形態の類似、それから進化の段階を重視したのが「進化分類学」だった。

しかし「進化分類学」はどの特徴を重視するかが人によって違うという問題を抱えていた。それを回避したのが1950年代に現れた「分岐分類学」である。「分岐分類学」は主観を排し、共通祖先を持つことと、一度現れ、その後も共有されている特徴を重視し、生物がどこで枝分かれしたのかだけを見る。「マグロは魚類じゃないならなんなのさ!」というと「硬骨魚類の条鰭類(じょうきるい)」ということになる。

単細胞からホモ・サピエンスまでを(色々ショートカットしながら)系統樹にしてみた。↓

これを見てみると、人間はどちらかというとタコよりホヤに近いってことにびっくりするし(ホヤは幼生時代に脊椎の原型みたいなのがあり、大人になると消える)、クジラと牛が同じ分類(鯨偶蹄目)ってことにもくらくらするし、生命の発生の時に一番最初にできる穴「原口」が、口になるか(旧口動物)肛門になるか(新口動物)でカブトムシ系統とゴリラ系統に分かれてしまうなんて、ほんとにやばい。

この世には命(多細胞動物)がいっぱいあるな。梅の木は植物系統の命だし、わたしは動物系統の命だ。最近エサをあげるようになった野良猫とわたしは、どちらも動物系統の1割の側に回ってしまった脊椎動物だ。残りの9割は節足動物や軟体動物の世界で、ニンゲンなんて全然マイナーなジャンルだってことに、急にうれしくなってくる。