遠浅

平野明

ここであったこと、出会った自分、出会った君、ドライブした時間、手を繋いだこと、閉館したラブホテル、若さと性別、永遠に歩いたこと、ゆるい風、味のしないキス、ぜんぜん酔っ払ってないのに。名前の由来、さとうきび畑、パイン畑、負けた背中、まっくろい歯、人に賭ける50万円、海と猫、吹かれる前髪、赤いドレス、まずいマグロ、全身のタトゥ、ここで生きる天使、また夜がくる。大麻とドラッグ、全身で笑うこと、語り続ける口、近づく耳、揺れ続ける偽物の髪、ラインを描くボクシングの話、ここで生きる、ここで生きてくと決める、どうしたら生きていける? 夜、展望台までドライブする、霧がかかっている、先の見えない仕事のはなし、あたしたちはガキだね。暗い照明で妻子持ちが手を絡ませてくる、ちぎれた耳、景色に馴染む穴、飛行機の音、無音の限界、君の世界から死んだ人、これから死んでく人、小説より最悪な現実、俺の歌は誰にも聞かれない、ここはどこ? 私はだれ? 都会へ行きたい、あそこに穴はないから、少なくとも見えはしないから。目の前の穴、それを埋めるのが俺の仕事。鏡を拭くように、自分を愛せる朝はくる? 光がさす、わたしは生きている、それがなによりも怖い。

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