遠浅

平野明

撮影日1968年

(これは京都のあるクラブで) 1967年にジャン・ジュネが日本に来ていたことは知っていた。恋人(ベンダガ)が自殺し、深い抑鬱状態だったジュネに、日本への旅路を勧めたのはヒサコだった。ジュネを乗せた飛行機は、同年12月22日にフランクフルトを出発する…

わたしのフェミニズム・ノート

ジュリアン・バーンズの紹介でアニータ・ブルックナーを知り、彼女の紹介でコレットを知り、そのまた紹介でボーヴォワールに流れ着いた。フェミニズム、もっと勉強したい。ボーヴォワールの「第二の性」の合間に「上野先生、フェミニズムについてゼロから教…

3月

生まれて初めて私は、塩や海藻や、波が引いたあとの湿って匂いを放つ砂地、ぬれてきらめく魚を楽しみ、手で触れた。海辺の気候が、私のなかの、長い苦しみの思い出と、考える習慣を眠り込ませ、緩慢にしていた。(私の修業時代/コレット)

親指Pの修行時代/松浦理英子

“無邪気で平凡な女子大生、一実。眠りから目覚めると彼女の右足の親指はペニスになっていた。”(河出書房HPより) 30年前の松浦理英子のベストセラーである。1995年の読者は何を思っただろう。ちょうど戦後50年、インターネットも未発達で、わたしはまだ生ま…

私の修行時代/コレット/佐藤実枝訳

63歳のコレットがかつての下積みの時代……20歳で結婚し33歳で離婚するまでの13年の時間を再訪する。修行時代、コレットに言わせればそれは「自分は自分でしかなく、つまり心優しいひとりの若い女でしかなくて、匿名の仕事にも、服従の生活にも誇りを持てずに…

モロッコ流謫/四方田犬彦

文章にジュネを探してしまうけど、モロッコに縁のある作家をばーっと読めてかなりおもしろかった。ポール・ボウルズのパートナー、ジェイン・ボウルズが破天荒な女すぎていい。読みながら何冊か本を買ったり借りたりした。文章上手。いい読書ができた。 エル…

一神教と聖典

三大一神教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)につながりが見えるとおもしろい。わかる範囲でまとめてみる。 ○3つの聖典三大一神教にはそれぞれ聖典がある。聖典とは、神による「啓示」が書かれているもので、旧約聖書→新約聖書→クルアーンの順番で成立…

女という生きもの

どうして生理の話は恥ずかしいのだろう? ドラッグストアでは紙袋を用意してくれるし、実家では生理や性の話はタブーだった。「生理バレ」に怯え、生理用品のハート柄にふるえ、このテーマの扱いの難しさ(不器用に寄り添ったり突き放したりする関係)は、す…

2月

これ、ぱーちゃんが編んでくれた巾着なんだけど上手じゃない? 突然はじまる編み物教室。わたしは紐通すところでギブアップして、編みかけの巾着は本棚に差してしまいました。ということで2月は編み物。(ウソでも一度は編んだもん。) 街灯にとまってたり、…

中東戦争を読む

4回の中東戦争とレバノン内戦をまとめたい。 ○1948年 第一次中東戦争(別名:パレスチナ戦争。イスラエルでは「独立運動」。アラブ側では「ナクバ(=大災害)」)・交戦国イスラエルとアラブ諸国(エジプト・シリア・イラク・レバノン・ヨルダン)・きっか…

作品はだれのもの

人と作品を作るのが大変なのは、作品の主体がいつも観客にあるからだ。作品は演出家のものでも俳優のものでもない。観客のものだ。だから観客の目を持った演出には人間味がない。自分の目ですら捨て、人間ではないものに全身でなっている。俳優の都合を考え…

感情教育/中山可穂

女2人の前史を語る文章の低体温さが好きだ。恋に落ちてからは、文章が熱さにふるえて溶けていきそうだった。小説の内容とは文章が示すものなのに、読みすすめるうちに内容が文章を造形しはじめる。床に打ちつけられたスーパーボールはいつまでだって見てい…

seven jewish children/Caryl Churchillを読む

キャリル・チャーチルの「ユダヤの7人の子どもたち」の戯曲は、2008年から2009年にかけてイスラエル軍がガザ地区を攻撃したことを受けて書かれた。この舞台に7人の子どもたちは登場しない。ユダヤ人の大人たちが、子どもに何を言うべきか/言わないべきか…

1月の気分

パートナーは大のファッション好きです。色々着させてもらううちに、もうちょっと知りたくなった気がする。1月の気分(=ファッション)は2本のマフラー。いただいた大事なもので、しかもカシスとブルーベリーな色、2色あるのがかわいい。 おしゃれな人っ…

日々Shazam

まるで友だちみたいに小袋くん小袋くん呼んでるNariaki Obukuroの紹介してくれる音楽が全部いい。Spotify上にFlip Side Planet(j-wave)で流した音楽リストを公開してくれていて、毎日恩恵を受けています。知らないアーティストと出会えるし、知ってるアーテ…

記録2024

【本】0113 キリスト教の核心をよむ/山本芳久0113 霊に憑かれた女/ジュリアン・バーンズ0118 怒り(上)/吉田修一0119 怒り(下)/吉田修一(一気読み)0125 パレード/吉田修一0203 東京湾景/吉田修一(最高)0203 余録の人生/深沢七郎0209 となりの…

結婚式の写真(Family and friends)

ぎゃー。これはおもしろい!英題はfamily and friends(一族と友達)。 この物語は4枚の結婚式の写真の絵解きである。アルバムを見返している今の時間が語るので、時間には奥行きがなく、全ての時制が現在形をとる。禁欲的な文体にはち切れそうなほど詰め込ま…

12月

ずらり。12月のグラスはデュラレックスの青でした。これで月にひとつマグカップを集める1年は終わりました。厳選したいから月に1個というルールだったけれど、月イチでも充分にいそぎぎみだと感じました。 みんなかわいくて大事。来年は月いちファッション…

思い出せば思い出すほど忘れてくれると思う

横田創の埋葬から窓/埋葬へ、まるっと引用したこの文章の解釈をずっと先送りにしたまま八戸市に来た。 悦子は言う。〈だけどもし本当に。そのひとにとってそれがとてもおおきなことであるなら。あたしが生きていたことと同じようにあたしが死んだことを受け…

11月

(11月のグラス。ポルトガル産。切り口がいい!) 人生が始まるのは何歳からだろう? 始まる前はひたすら世界は混沌として見えた。アスファルトをアスファルトと思えなかったし、人の数だけ固有の世界があることが怖くて新宿が嫌いだった。わたしたち人間じ…

ベルリン・天使の詩

「ベルリン・天使の詩」を観た。サブスクじゃなくて、パートナーが持っていたDVDで観た。プラケースをパカっとあけて、DVDプレイヤーに乗せて再生すると、ライオンが吠えるオープニングが流れて(メイヤーという配給会社らしい)、幼稚園児だったときの世界…

10月

10月のマグ。群馬の道の駅(?)で買いました。かわいい。お気に入り。 マグカップが増えてきて、気を緩めると台所の流しがカップだらけになっちゃいますね。 1 同級生がプレステの「ワンダと巨像」が超好きで、熱弁してくれて、上田文人ほんと天才、ICOと…

the labyrinth 2023

10月頭の3連休で、ラビリンスに行ってきました。すごく楽しかった! https://www.mindgames.jp/laby23-2 世の中は目まぐるしく変化して行きますが、ラビリンスは引き続きアンダーグランドエレクトロニックミュージックの最高峰を目指すべく、サイケデリック…

手ばかりポタージュ

手ばかりポタージュ覚え書き。(2人分) ①小鍋を用意。200mlの水とコンソメを1かけ入れます。②ネギ類をざくざく切って鍋に入れます。玉ねぎなら半分。長ネギなら手のひらぐらい。蓋をして中火でしばらく煮ます。③その間にメイン野菜を用意します。おすすめ…

9月

9月のマグ。鎌倉で買った。 南風から北風に変わったのが9月22日の夜。それを境にぐっと涼しくなり、窓を開けて過ごす日が多くなった。夕方に散歩をしていると、開け放った窓から夕ご飯の匂いや話し声が聞こえてきて、春先みたいだなと思う。 10月になると1年…

豊岡日記2

豊岡演劇祭フリンジショーケース「窓/埋葬」が終わりました。本当に楽しかった。 9月13日 新幹線で京都へ。きのさき号で豊岡へ。夕方にテクリハ4時間半。9月14日 午前にゲネ。キュイ観劇。夕方に初演。江原の宿(心ん屋)で打ち上げ。9月15日 午前に2st。…

豊岡日記1

6時起床。朝ごはんを食べてリュックを背負って豊岡へ向かう。新横浜を新幹線で出たら京都できのさき号に乗り換え。14時ごろ江原駅着。改札を出ると豊岡演劇祭ののぼりが立っている。宿で休憩して劇場へ向かう。宿から劇場までは車で40分かかる。 夕方から場…

8月

8月のマグ。鎌倉で買いました。沖縄の読谷村産の焼き物(やちむん)。日に日に格好良く見える。使ってるのはほとんど同居人です。 夏が夏のまま秋の風を吹かせてる。あっというまの夏だったけれど、あっというまではなかった。毎日いろいろあった。空を見た…

「窓/埋葬」豊岡公演のお知らせ

手手は豊岡演劇祭2023フリンジショーケースに参加します。 第8回公演「窓/埋葬」の再演を新しいメンバーでお届け。再演は初めてなのでうれしいです。新作を作るときとはまた違うアプローチの仕方を経験できて勉強になります。睦海さんと朋香さんがすごいん…

おすすめだけが人生だ

ナナのブログ、バナナの木がおもしろいのでおすすめ。ナナとは2022年のシビウ国際演劇祭のボランティアで一緒だった。 bnanananana7.hatenablog.com あいかわらず(そして人知れず)バシバシ芝居見てガンガン文章書いてるのがうれしい!日常と文章との距離感…