遠浅

平野明

豊岡日記2

豊岡演劇祭フリンジショーケース「窓/埋葬」が終わりました。本当に楽しかった。

9月13日 新幹線で京都へ。きのさき号で豊岡へ。夕方にテクリハ4時間半。
9月14日 午前にゲネ。キュイ観劇。夕方に初演。江原の宿(心ん屋)で打ち上げ。
9月15日 午前に2st。マチルダ、範宙遊泳観劇。
9月16日 荷造り。昼に千穐楽。解散。

忙しすぎて一瞬で終わった4日間でした。再演自体も、客演を呼ぶのも、演劇祭に参加するのも、豊岡に行くのも、ショーケースも、テクニカルスタッフの手厚いサポートも、舞台監督がいる現場も、なにもかも初めてでした。毎日新しくて楽しくて目まぐるしくて気が張っていて「身体のスピードがはやすぎる!」とパーが夕飯を食べながら叫ぶほどでした。

これまでひとりひとりが仕事を兼任しすぎていた部分を見直すことができたのも再演の収穫でした。上演舞台を形式と内容に分け「空間のデザイン」と「役者と役の接続」にそれぞれ演出家をつけることでかなり仕事がしやすくなりました。演出家と演出助手ではなく、演出家が2人いることで「ものさし」の持つ不安と権威が和らいだ感じがあります。

それからテクニカルスタッフの大事さをひしひしと感じた回でした。ショーケースでは劇場付きの音響・照明・舞台監督さんがいて、ここの安定感があったからクオリティを上げることに専念できたのだと思います。舞台監督がいる現場すらはじめてだったので、テクリハのスムーズさに感動しました。プロのテクニカルは言語化のプロ。誰もキャパオーバーになることなく会話が噛み合わないストレスもなく、生まれてはじめて自転車に油を差したときみたいに上演までたどり着けました。「伝えたいことを伝えて時間内に終わる」これって本当にすごいことで、当たり前じゃない。

音。光。服。色。形。これらを役者のパフォーマンスと同じ次元で大事に思っています。これから手手はお芝居をやるつもりはなくて、これまでもこれからも理想の形は舞台です。そこが螺旋階段でも芝生でも劇場でも。舞台でしか見れないものを見せたいといつも願っています。もっと現実に間接的なライブ感で、全員で深いとこまで行きたい。そのためには作品を他人にあずける勇気が必要で、あずけられるぐらいに強度(誤解される力)のあるテキストを書かなきゃいけないと改めて思いました。

舞台と自分との距離感は今年に入ってとても遠くなりました。今は本を読んでいて意識的に文学の方向に自分を振っています。ソロで活動する中で舞台にも提供できるような作品を出せたらいいな。

今回は本当にいい機会でした。すてきな役者に恵まれたし、整った環境でやってみる経験もできました。観てくれたお客さんには励まされました。ありがとうございました!まだまだがんばります。

(喫茶店「窓」の前で。)