遠浅

平野明

5月

5月のマグ。
藤沢のビルの3階の隅、がちゃがちゃした雑貨屋のアウトレットコーナーで。100円+tax。人差し指を突っ込んでコーヒーを飲みます。

5月にはしばしば飽きた。炊飯器を何度も開けたり閉めたり、爪の成長を何度も確かめたりするように、今月半ばの時点ですでに5月を締めくくりたかった。明日も明後日もその次も私には想像できる、どんな気分か何を話すかも想定内、新米のような顔をした実質昨日な今日にはうんざりなんだという具合。つまり10と1/2章で書かれた世界の歴史をなかなか読み下せずにいた。食べても食べても底の見えない雲丹丼に挑むフードファイターのよう。まるで読めない自分がバカみたいで悔しい。彼女らも雲丹を頬張りながら時々思うのだろうか。「終わって欲しいところで 人生終わらない」*

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これが5月の全部に起こったことだとは信じ難い。1ヶ月というのは意外に長いのかもしれない。ジュリアンバーンズは面白い。窓から見える川面はいつも光っている。マスクを外す人が少しずつ増えてきた。

 

*「キレイな人/宇多田ヒカル」の歌い始め。