遠浅

平野明

海底に雪/ 横山彰乃

Choreographers 2021を見にいった。怪我して松葉杖だし、誰かにチケットを譲ろうとも思ったけれど、やっぱし絶対見たくて、這ってでも行きたくて、タクシーを拾った。


横山彰乃さんが出てるからだった。

ミュージシャンの小瀬村晶のMVで彼女を知ってから、ずっと好きだった。一目惚れした。感情ってこうやって目に見える形に生まれ変わるんだと思った。太くなったり細くなったり、けれど途切れずに繋がっていく運動は、生まれてはじめて筆を手にしたこどもが作り出してるみたいだった。

ゆーきゃんの「太陽」の即興なんかもすごくいい。これは2年前に30回ぐらい見た。真似しようとしたけど、普通に無理でした。

 

https://youtu.be/7lZruLkP8B8


公演の話だった。『海底に雪』という作品。はじめて肉眼で(生で?)横山さんの踊りを見たのだけど、これがもうほんとーにすごかった。もっと、クレヨンで描いた虹みたいなダンスなのかと思っていた(稚拙って意味ではなくて)。ではなくて、顕微鏡を覗き込んだら細胞が目の前で分裂したみたいな、極小でリアルな世界があった。具体的なんだけど、解像度が上がりすぎて抽象化したような、そんな空間の作り方だった。圧倒されながら、はじめて彼女を見た時のように、感情ってこうやって目に見える形に生まれ変わるんだと思った。あと照明がとってもよかった。


あたりまえだけど、念のこもった作品は空間を作る。そこにそれがあるだけで、結界が張られるのが見える。陣地ができる。化粧なんかもそうだと思う。気を宿して筆を肌に乗せると、その人の気持ちはちゃんと化ける。


デカい音が鳴る。光が床をなめてく。彼女が水中で踊ってる。指先が滑らかに音をつなげて、時間を裂いては、また再生するようで。植物が芽吹くその瞬間を、永遠にしたいと願ったような気持ちが、こうやって目に見える。

 

https://jcdn-web.org/news/news-2365/

 

帰りみち、気合いで歩いて帰る。